まわりまわる

迷える社会人のたわごと。日常と好きなもの。耽美が良い。

皆川博子『アルモニカ・ディアボリカ』耽美と悲壮感を堪能できる、美しい1冊

 どうもこんにちは、ベッドの中でスマホをいじっている時間が至福な女子大生です。布団は正義。
 何に対してもやる気が出ない、うまくいかない時ってありますよね。今がそれで、色んなものにちょっとだけ距離を置こうって思います。だから、日常のダイヤリー的ブログは置いといて。今回も読書感想文いきます。

 

 

 

  さて今回は、

 

f:id:yfumimoko:20171031225630j:image皆川博子先生の『アルモニカ・ディアボリカ』!!前回、『開かせていただき光栄です』について書いたので、アルモニカも書くぞ〜!!(でも、結構な前半部分で衝撃の事実に打ちのめされるので、まだ読まれていない方は開かせて〜の余韻に十分浸っから今作を読んだ方が良いですよ!!)

 

 見てくださいこの青い表紙の美しいこと!!表紙から耽美が漂っていますよね。

 

 ーーー18世紀英国。愛弟子エドらを失った解剖医ダニエルが失意の日々を送る一方、暇になった弟子のアルたちは盲目の判事の要請で犯罪防止のための新聞を作っていた。ある日、身元不明の屍体の情報を求める広告依頼が舞い込む。屍体の胸には〈ベツレヘムの子よ、よみがえれ!アルモニカ・ディアボリカ〉と謎の暗号が。それは、彼らを過去へと繋ぐ恐るべき事件の幕開けだったーーー文庫本表紙裏より。

 

 はぁ、もう導入部分で悲壮感と共に美しい匂いがぷんぷんする。好き。

 

 

 「アルモニカ」は、天使の、という意味なのですが、「アルモニカ・ディアボリカ」とは、そのあまりの背徳的で美しい音色を奏でるために神がお怒りになった、悪魔を呼び出すとまでいわれる楽器のことです。

  

 前作から時が経ち、悲しみは癒えてはいないものの、バートンズはみんなそれなりに大人になっています。

 詩人になるのが夢だったネイサンも現実に飲まれ、今は銀行員として働いています。

 ロンドンで仕事にありつけるだけで感謝しないと、と思いながら、自分の興味のない仕事に人生を費やしていることに悩んでいるネイサンは、うじうじしていて人間っぽくて、自分と重なる部分があって好きです。

「好きなことをしてお金を稼ぐことは、人生最大の贅沢。〜〜〜1人で過ごす夜、詩を書こうと思うのだけど、隣の部屋の住人が騒々しくて……というのは、才能の枯渇を認めたくない言い訳だ。」

なんて言ってしまっている。前作であんなに自信満々だったのに……。

 

  前作での結末の責任も感じていて、過去の事でぐるぐる悩んでいるネイサンですが、今作はアルの次くらいに活躍しています。がんばれって応援したくなっちゃいます。(回想場面ではナイジェルが主人公だが、明確な主人公は居ない)

 

 

  前作よりも人間関係が複雑で、過去と現代が入り乱れ、この物語の核となるのは天使のような屍体で、より耽美な仕上がりになっている今作。 開かせては赤で、アルモニカは青。続編だからとタカを括っていると、広がる世界の色と温度の違いように驚いてしまいますよ。

 

 

 ナイジェルの回想で、「僕は僕が望むように君を変えた。」ってセリフがあります。

 君っていうのはエドの事。ナイジェルの底知れない不気味さとか、でも特別な人への一途さが出ている、とても好きなセリフです。

 エドとナイジェルの関係がどんなものなのか、明確には分からない。(オーベロンとタイターニアではあるけどね。)エドがナイジェルのことをどう思っているのか、ナイジェルがどうしてそんなにエド固執するのかも、推し量ることは出来るけど、書かれていない。

 でも皆川先生が書かれなかったその余白の中に、2人だけの大切な想いや時間があって、2人にしか分からない色々があったんですよね。

 

 ナイジェルの回想で出てくる施設のメンバーとの会話はちょっとだけほっこり。あの人たちはナイジェルの家族のようなもので、主に、あの幼い頃のナイジェルの傍にディーフェンベイカーさんが居てくれて良かったなと思いました。オカシイことがフツウだったナイジェルに、フツウの世界をちょっとだけ垣間見せて教えてくれた人かなと。

 

 

 今作のキーワードである「アルモニカ・ディアボリカ」も、「ベツレヘム」も、ほんっとにもう背徳的です。つくづく思うのだけど、美しさと残酷さって紙一重ですよね。それらが放つ妖しい空気に魅了されてしまいます。

  皆川先生の頭の中ってどうなっているんだろう。どのようにお話を作っているのか、その過程が気になります……。

 

 

 切なく悲しい結末だけれど。
 物語は続いていく、語られないだけで。私たちが知らないだけで。(そしてほんの一部をまた、クロコダイル路地で読むことができます。ちょっとだけど、バートンズとアンが出てくるよ!)
 みんなが、特にエドが、ほんの少しでも幸せだと思える人生を送れますように。ナイジェルに会えて良かったと思っていますように、と願うばかり。

 

 

 

 

 ここまで読んでくださった方は、ありがとうございました。

 良い本との出会いがありますよーに。みなさんもね。

 

                                       ちゃんちゃん。